ピラティスインストラクターの年収・資格・勉強法【総まとめ】
近年、ブームを通り越し日本社会に定着した感のあるヨガ。同種に扱われがちなピラティスが、実はヨガとは全く違うと言う点はあまり意識されていません。ピラティスとヨガの違い、ピラティスインストラクターの実際、仕事にするための要件などをご紹介します。
1)ピラティスとは?ヨガとの違いって何?
ヨガスタジオでピラティスのコースがあったり、ヨガ・ピラティスと併記されていたり。なんとなく同じようなもののように考えられがちなヨガとピラティス。ヨガとは違う、ピラティスの成り立ちや魅力を見てみましょう。
ヨガとの違い
(1)成り立ち
ピラティスは、1920年代にドイツ人従軍看護師ジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスが開発したエクササイズです。
現代ではヨガのアレンジ、またはヨガとよく似たものとして捉えられがちですが、もともとは戦傷病者のリハビリテーションのために考案されたものであり、身体のストレッチ、筋力や身体バランスの強化や回復を目的としている点で、瞑想法として発生したヨガとはその成り立ちが異なります。
(2)筋肉の捉え方
リハビリテーションから発生したピラティスは、骨格を意識しながら体幹の筋肉を整え、姿勢や動作を正すことを重視します。身体感覚に特に注目していると言え、基本的に動きは止めずに行います。
翻って、ヨガは、独自の思想や哲学を持ち、心の平穏や精神の安定などスピリチュアルな面を重視しています。静止ポーズが多いことも特徴です。身体と心の調和を図る、という点では類似しているものの、それぞれに、重要視している方向性が違うのです。
(3)呼吸法
肉体感覚を重視するか、精神性を重視するか。この違いは、ピラティスとヨガの、理想とする呼吸法の違いにも表れています。
ピラティスの呼吸は交感神経を活性化して感覚をクリアにする胸式呼吸で、一方のヨガでは副交感神経を活性化して精神をリラックスさせる腹式呼吸です。それぞれ異なる効果を期待して、異なる呼吸法を行うことを求めています。
現代社会とピラティス
(1)ニーズ
もともとは戦傷病者のリハビリとして考案されたピラティスですが、現在では、美容や健康面で特に注目されています。ヨガと比べて動きが多く活動的な印象で、より筋肉強化に向いている点が主な理由でしょう。また、本来のリハビリエクササイズの目的を以って、医療機関や、運動強度に制限のある産婦人科でも多く取り入れられているようです。
(2)対象
ピラティスは身体への働きかけが多いエクササイズでありながら、激しい動きがないのが特徴です。負荷も小さく高齢者や低体力者にも向いており、比較的対象を選びません。
現在は決してメジャーとは言えないジャンルですが、姿勢矯正や身体機能回復と言った効果から現代の高齢社会の健康志向にもマッチしており、今後、活用の幅が広がることが期待されます。
長い歴史の中でメンタル面を重視し編み上げられてきたヨガに対し、ピラティスはそれほど長い歴史があるわけではありません。しかし、成立が新しいからこそ体系的に整理され、効果が検証されているのがピラティスです。
実践を通して磨かれた結果多くのアレンジが施されたヨガに比べ、歴史がたどり易く理論的である点は、ピラティスを学ぶ際のメリットとなります。
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2)ピラティスの知識
ピラティスは歴史が新しいだけに、方法論が整理されており、内容が複雑すぎると言うことがありません。正しい知識と実践で効果を得られやすい点が良いところです。
反面、正しさにおいてヨガより厳密な部分もあるため、種類や種目ごとの対象、求められる効果など、基礎的な理解が大切になります。
ピラティスの種類
(1)マットピラティス
マットピラティスは、ベッドの上でも行えるように開発されたピラティスです。もともとリハビリ目的で始められたピラティスにとっては、最もベーシックなものと言えるでしょう。
マットさえあればできますので、気軽に取り組めます。大小のボールやゴムベルトなど、補助的な道具を使用する場合もあります。
(2)マシンピラティス
専用の器具を利用しながらエクササイズに取り組めます。身体的な負荷を調整することができるので、高齢者や怪我等肉体的トラブルを抱える方にも向いています。
全身を効率よく使うためのリフォーマー、座面とスプリングの組み合わせで筋力強化を行うチェア、ベッド型のトラピーズテーブルなどの大型器具を中心に、さまざまな補助器具を用います。
求められる効果
(1)効果1:姿勢の改善
ピラティスは肉体感覚にフォーカスしたリハビリ目的のエクササイズがベースにあるため、筋肉への刺激という点で特に効果があります。
普段使わない深層筋、いわゆるインナーマッスルを使い、また整えることで、姿勢改善や歪みの矯正が見込めます。
(2)効果2:代謝アップ
ピラティスはヨガとは異なり、胸式呼吸で交感神経を活発化させます。加えて、ゆったりとした動きながら静止せずに動き続ける、運動としての側面もあります。
結果、呼吸量が増え、運動で筋肉が温まることで身体が軽く動きやすくなり、代謝アップにつながります。
(3)効果3:心への効果
ピラティスはヨガと違いスピリチュアルな面を重視はしていませんが、それは、心を整える効果がないと言うことではありません。激しすぎない適度な運動量と、ゆっくりとした深い呼吸の組み合わせは、心を落ち着け思考をクリアにする効果があります。
また、猫背の矯正で考え方まで前向きに明るくなると言われますが、ピラティスは腹筋背筋をつける効果があるため、姿勢の改善によって、同様の心の変化も期待できるのです。
リハビリテーションエクササイズとして開発されたピラティスは、傷病者でも簡単に行えることが重視されています。
正しい姿勢や動作で身体機能の回復を図るとともに、怪我や肉体トラブルを抱えて心が塞ぎがちな方のためか、運動を通した精神活動の活発化や前向きな思考へのアプローチが考えられている点も、非常に興味深い点です。
3)ピラティスインストラクターになるには?5つの資格を解説
ピラティスのインストラクターという職業は、決してメジャーとは言い難いのが現実です。そんな中で、ピラティスの正しい知識を身に付ける、ピラティスを仕事に活かす、という希望は、どのように叶えるべきでしょうか。主に知識の習得、特に周囲に認めてもらえる正しい知識の身に付け方として、勉強の仕方や資格習得について考えてみます。
ピラティスを学ぶ
(1)正しい知識を身に付ける
ピラティスは、ヨガとは異なり、独学や自己流で指導をしているケースはほとんどありません。正しい姿勢、正しい動作の指導が大切なため、既定のメソッドに沿った正しい指導方法が重んじられます。
ですから、先ずは、自分自身がスタジオの一般クラスを体験したり、インストラクター養成所の講座や養成コースに参加するなどして、正しいトレーニング法や知識を身に付ける必要があります。
インストラクターを名乗るのに資格は必須ではありませんが、資格取得のための勉強は、正しい知識習得への一番の近道と言えるでしょう。
(2)指導スキルを身に付ける
正しいトレーニングを積み方法論を身に付けた方がインストラクターを目指す場合、次に求められるのは安全性への理解、そしてコミュニケーションスキルです。
身体にトラブルのある方がリハビリとして行うことを本来の目的とするピラティスでは、特に安全性への理解が大切です。また、近年、グループレッスン以外にもパーソナルトレーニングの需要が伸びていることから、マンツーマン指導にも堪えるコミュニケーションスキルは重要なものとみなされています。
(3)ピラティスを仕事にする
ピラティスはヨガと違い、身体面、筋肉の動きや姿勢、運動機能の改善を目的としています。つまり、ヨガインストラクターのような精神的な導き手としての存在感は、指導する側には求められていないのです。仕事としてピラティスの指導を行うなら、相手の目的や目標を見誤ることなく、最適な指導を提供するという姿勢を常に意識してゆくべきです。
資格を取る
(1)資格1:BASIピラティス
全米各地、世界30カ国でピラティス専門のプログラムを提供者している、世界最大規模のピラティス専門団体です。
日本では東京、大阪、岩手、名古屋、北海道、仙台の6都市で、マット、マシン、マットとマシンの両方のエクササイズを指導できる、3種類のインストラクター養成講座を開講しています。
学習期間は最短36時間、費用は最低価格で約30万円からです。試験合格後に指導者資格が発効されます。
(2)資格2:PHIピラティス
リハビリテーションとコンディショニングとしての「ピラティス」を正式に継承していると称する、トップアスリートから高齢者までアレンジを活かせるプログラムを提供することを目指す団体です。
認定コースは全6コースあり、最もベーシックなマットコースは学習期間4.5日、費用は約24万円となっています。試験合格後には、本部のあるアメリカから指導資格の認定証が送付されます。
(3)資格3:JAPICA日本ピラティス指導者協会
スポーツドクターや理学療法士、アスレチックトレーナー等を迎えて設立された団体で、欧米人とはちがう日本人の骨格に合わせたアプローチ法を加えた指導を行っています。本来のピラティスからすると、アレンジされている新流派の部類に入ります。
マットピラティス2コース、マシンピラティス1コースと専門コースとして特にゴルファーを指導対象とするゴルフピラティスの資格を認定しています。基礎コースは指導者資格ではなく知識習得証明となりますが、修了までの学習期間は15時間、費用は約8万円で試験合格後に修了書の発行を受けることができます。
(4)資格4:ストットピラティス
カナダに本部を置き、傷害等身体的に特殊な条件をもつ方、またアスリートからビギナー、高齢者まであらゆるクライアントに対応できるインストラクターになるための体系的なカリキュラムを提供している団体です。
資格取得のためにはさまざまなコースがありますが、インストラクター希望者も含め、初めてプログラムを受講する方には初級・中級マットコースが推奨されています。
講座の学習期間は40時間ですが、修了後に各種課題が計95時間分設定されています。すべて終了すると、インストラクター資格試験の受験資格が認められます。費用は最低価格で約31万円からとなります。
(5)資格5:一般社団法人 ボディ・エレメント・システム・ジャパン
ピラティスの普及による心身の健康促進、維持に寄与することを目的として、情報発信や指導者育成を行う団体です。
マットやマシン等全4種類のトレーナー資格とその他2種類の認定資格があります。マットピラティストレーナー資格は学習期間全32時間、費用は約18万円で、日本国内約20地域で受講できることが特徴です。
ヨガに比べれて愛好人口は少ないとはいえ、上記のように、ピラティスの普及や実践を目的として講座や認定資格を設置している団体も存在します。
また、ヨガスタジオやヨガスクール等がヨガに関わる1コースとして、或いはフィットネス系スポーツトレーナーの1コースとして、ピラティスのインストラクター資格を認定している場合もあります。
さらには、幾つかの通信教育でもピラティスを学ぶことができるようです。思ったよりも選択肢が多く、ハードルは高くなかったのではないでしょうか。ご自分のライフスタイルや必要性、興味の深さに合った内容をよく吟味し、より良い形での学習方法を選んでくださいね。
4)ピラティスインストラクターの働き方って?業種・年収とは?
知識を得て資格を取ったら生業として活かせるのかという点は、ピラティスを学ぶ上で気になる点だと思います。
ピラティスインストラクターとして収入を得るにはどんな方法、働き方があるのか、代表的なものを見てみましょう。
業態
(1)正社員として働く
正社員の求人を出しているような施設でピラティス専門のスタジオというのは、現時点では決して多くはありません。
ピラティスのレッスンを開講しているフィットネスクラブのインストラクター職、ヨガスタジオ内のピラティスコースの講師などが、現実的な選択肢となります。
その場合、ピラティスを教えることのみを仕事とすることは難しく、他のコースのインストラクター、雑用等社内業務も並行して担うことになるでしょう。
(2)フリーランス
正社員として働く場合のような安定性はありませんが、フリーランスのインストラクターを目指すなら、ピラティスを専門で扱うことも可能です。
フィットネスクラブ等でのレッスンはもちろん、リハビリや介護予防の一環としてピラティスを取り入れている医療、福祉介護施設、また健康教室やイベントへの出張等、必要とされる場面は多々あります。
人脈づくりや営業力が必要となりますが、努力次第で結果が得られる、やりがいのある業態です。
(3)スタジオや教室を開設する
フリーランスとしてレッスンを開くのと並行して、または生業の主軸として、ピラティスのスタジオや教室を開設すると言う手段もあります。
その場合は講師、インストラクターとして他者を指導するための知識だけでなく、スタジオ経営、教室運営についての知識も必要となります。特に、宣伝などの集客に関するノウハウは収入に直結する大切な要素となります。
年収
(1)平均年収
ヨガスタジオ、フィットネス施設インストラクターとしての社員の平均月収は、17〜19万円と言われています。年収200万円ほどで賞与分がプラスされる程度と給与面では優遇されているとは言えませんが、実績を積みベテランと見做されるようになれば、月収30万円ほどまでは望めるというのが一般的な見方です。
とは言え、インストラクター職に就いている方からは、趣味を仕事にできる楽しさや生徒さんから受ける感謝の言葉など、給与以上の価値が感じられる仕事だという意見も多いのが特徴です。
(2)収入の安定化のために
ピラティスは近年人気が上がって来ているとはいえ、ヨガやエアロビクス系のスポーツインストラクターほどの求人数がないのが現実です。
ヨガとピラティスを併せたサロンも多いことから、収入の安定を目指すなら、ピラティスと併せてヨガの知識もあると良いでしょう。
正社員として就職する場合には応用が利く方が好まれますし、フリーランスとして働く場合でも、顧客のニーズを満たしやすくなります。
(3)収入の現実
ピラティスやヨガのインストラクターとして働く場合、フリーランスで望める1レッスンの報酬は、平均4,000~5,000円程度となります。週5で働くフリーランスインストラクターのモデルケースとして、1レッスン5,000円とした場合週9回で45,000円、月収見込みは180,000円ほどです。
プライベートレッスンやレンタルスタジオ等での教室開催なども担えれば収入増は望めますが、実績や営業努力、併せて備品やスタジオレンタル代などの経費が必要になります。
ピラティスインストラクターを生業にするには、まだまだ難しいのが現実です。ヨガなどほかの資格も併せて取得することで活動の幅を広げたり、本来のリハビリエクササイズとしての効果を考慮して医療や介護福祉現場で働くことも視野に入れて考えてみましょう。
また、趣味や日常の運動としてピラティスを取り入れたいと言う層に対し、副業としての立場で指導やレッスンを行うのも一つの働き方です。生業として以外の活かし方についても考えておくと、将来の可能性も広がりますね。
5)ピラティスインストラクターに関するその他のQ&A
【Q1】ピラティスは我流でも習得で切るの?
ピラティスは方法論の確立されたエクササイズなので、我流での習得は推奨されません。ピラティスのスクールに通い正しいトレーニング法を理解する、また、養成スクール等に通い正しい指導法を理解する必要があります。きちんとした指導者について正しく学ぶことが、ピラティス習得への近道でしょう。
【Q2】フリーランスのピラティスインストラクターになりたい!注意する点は?
生徒、講師とも身体を使うエクササイズ関連の指導においては、一番の留意点は安全です。怪我はあってはいけないことですが、万が一ということもあります。スポーツインストラクター向けの賠償保険については、内容を確認したうえで必ず加入しましょう。また、自宅をスタジオとして使用する場合には、施設や設備に対する保険も検討する必要があります。
【3】ピラティスの資格と一緒に持っていた方が良い資格はある?
ピラティスの資格一本では、就職やフリーランスでの活動の際に決して有利とはならないのが現実です。ヨガとピラティスをひとまとめに考える風潮も考慮すれば、ヨガ系の資格は持っていた方が良いです。特に、ヨガの流れをくむタイ式美容体操、リラクゼーションマッサージ法であるルーシーダットンは、資格としてはマイナーながらピラティスと思想的に重なる部分も多く、指導者受講者ともに興味を持てる分野ではないでしょうか。
ヨガに比べれば未だマイナーな感のあるピラティスですが、しっかりとした方法論が確立し、専門の認定団体も各種存在する等、内容は充実しています。
マットのみで行える手軽なエクササイズからリハビリに向く専用マシンを使用するものまで、負荷を調整しやすいのも良い点でしょう。医療や介護福祉現場など知識を活かせる場も多く、美容健康を目的とするフィットネス業界以外の場でも需要が増すことが予想される資格です。

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